天国の日々
鑑賞後、これまでの映画体験では一度も味わったことのない、強烈で、そして静謐な感覚に包まれた。もうしばらくは他の映画を見ることができないかもしれない。それは、あまりにも美しいもの、あまりにも完成されたものに触れてしまった後に訪れる、一種の虚脱感、あるいは深い充足感にも似ていた。 この言葉にならない感動…
ジャンヌ・ディエルマンにおける日常と形式のラディカリズム
シャンタル・アケルマン監督が1975年に世に送り出したジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔23番地は、映画という言語そのものへ挑戦し、観る者の知覚に対し深く鋭い問いを投げかけてくる記念碑的な作品だ。 その核心には、日常というものの執拗なまでの描写とそれを強固に支える厳格な形式主…
グランジを聞く春
この世界には、心をガツンと殴ってくるような、強烈なコンテンツがある。例えば、グランジ。あれは、とんでもなく効く。 第一に、音が最高にクールだ。それは、ツルツルに磨き上げられた、どこにも引っかかりのない音じゃない(もちろん、そういう音にも良さはあるけど、今はグランジの話)。歪んでいて、ザラザラで、ノイ…
映画パーフェクト・デイズ
この世界にはたくさんのおもしろいものがありますよね。例えばアンパンマン。あれはものすごくおもしろいです。 まず、顔がパンというのが良い。食べられる。自分の顔をちぎって仲間に分け与えられるカリスマ性がアンパンマンにはある。アレクサンドロス大王のよう。しかしアレクサンドロス大王は熱病に侵されて死んだが、…
Charlatans
シャーラタンズのバチクソい曲を集めたから、ここで供養しておく。 https://open.spotify.com/playlist/6pWdWj1GUSM82nMe0a9DsZ?si=mo-YYEnwQUCVrzHg7xQFmA まじで、えげつないくらいかっこよくないか? ほんまに、めっちゃくちゃか…
時間の使い方
週末に少し休む時間ができても、何か生産的なことをしていないと落ち着かず、年100本以上見てた映画も、毎週末出かけていた登山も、全然みたりやれたりできなくなりました。 こうした症状は、世間でワーカホリックと呼ぶそう。 それは単なる働きすぎとは異なり、仕事そのものに依存する状態を指している。仕事を行うと…
四苦八苦、生まれた瞬間から死に向かって生きている
「四苦八苦」という言葉は、厳しい状況や困難に直面している様子を表したいときによく使われる。だけど、もともとの意味は少し異なる。人間が生きる中で避けられない苦しみの種類を示す仏教の教えに由来している。 まず四苦とは、「生老病死」を指す。私たちは、どのような環境や条件で生まれるかを選ぶことができず、年を…
洗い立てのブラウスが今筋書き通りに汚されていく
スピッツの好きなフレーズを味わう回。 スピッツの「スパイダー」の「洗い立てのブラウスが今筋書き通りに汚されていく」というフレーズが大好きだ。 https://youtu.be/mf-RrGndfC8 可愛い君が好きなものちょっと老いぼれてるピアノさびしい僕は地下室のすみっこでうずくまるスパイダー 洗…
グランジ
前に紹介したいわゆるハードロックが陽ならグランジは陰。 内面的な葛藤や社会風刺をテーマに、ヘビーなギターリフやディストーションを多用した重さや暗さを帯びたサウンドが特徴で、今年の春はよくグランジを聞いていた。 気持ちのよいさわやかな春はグランジのベストシーズン。じめじめした音楽ほど天気の良い日に聞く…